こばと。 総感

もしかしたら、今シーズンで一番辛い別れだったのかも。そう思えるほどに、毎週楽しみな作品でした。

初回の印象は、世間知らずの天然でピュア100%の灯里ちゃんみたいな子なんだろうなーと思ってて、イマイチ好きになれないかも・・・なんて思ってた。それが2話辺りから少しずつ印象が変わっていって、3話ではすっかり変わってしまった。

小鳩は決して何も知らないピュアな少女なんかじゃなかった。自分に課せられた運命を知り、人の心に宿る闇の部分を知って、それでも自分自身の存在をかけてまで大切な人を思うことができる子だったんだよ。上辺だけの善良さではなく、それを超えた思いがあるからこそ、これほど心を打つのでしょう。

21話の感想でもだいぶ小鳩ちゃんへの思いについて書いたのですが、何の打算もなく、「善良である」という善悪の物差しで測ることすら汚れて見えるような、小鳩の純粋な思い。「大切な人のそばにいたい」という強い思いが他人に伝染していき「癒し」となる。そう考えると、あの無表情で冷酷に見えるうしゃぎさんは、すべてを分かった上で小鳩に試練を与えていたのかもなあ・・・。

感傷的な感想はとりあえずこの辺にしておいて。アニメーション作品としての感想は「マッドハウスの本気を見た」の一言に尽きるなあ。丁寧な作画と、光と影の使い方。CLAMP作品の持つポップさと残酷さという二面性を、これほどドラマチックに演出してくるとは。出崎アニメばりの影の演出と、CCさくら以降のポップな画面を見事に融合させつつ、19話のような新しい現代アニメの形に昇華させたのは本当にすばらしかった。

声の話をすると、やっぱり花澤香菜でしょう。「灯里ちゃんっぽい」という話は散々してきましたが、小鳩ちゃんがより生々しい*1女の子に見えたのは花澤香菜の演技によるところが大きい。普段はボケボケなかわいさを出しつつ、所々で見せる素の表情だとか、必死に叫ぶ表情だとか、そういう色々な面をちゃんと心に残しておけたのは花澤香菜のおかげでもあったんだよね。

初回を見た時点では単なるゆるいアニメだと思っていたのになあ・・・。まさかここまで心に響く作品になるとは。

綺麗事で世界は動かない。避けようのない不幸は結局避けようがないし、救われない人は救われない。でも、そんな世界の中で、大切な人を思う気持ちが小さな奇跡を起こす。そんなファンタジーが、ひとつくらいはあってもいいよね。

*1:まあ、実際は死んでるんだけど(笑)