アキカン! 総感

これは人を選ぶ作品かもしれない。でも、1話を見て少しでも感じるものがあったなら、きっと心に残る作品になるはず。自分にとってはそういう作品でした。

空き缶が女の子になる!という擬人化ネタの思いつきだけで作ってしまったようなお話と思いきや、「要らない存在」としての空き缶からメロンたちの根底に流れる孤独感を掘り下げていったり、ジュースを飲む行為を契約の儀式に見立ててキスする構図にしていたりと、話が進むうちに元ネタとしての「空き缶」がすごく生かされてました。

そして、そんな設定を生かした個性的なキャラクター。女の子の魅力もさることながら、主人公のカケルの変態っぷりは1話からぶっ飛んでたなあ・・・。そんなカケル以上に変態な男屋さんもすごいインパクト。この変態たちの繰り出す変態的な行動に対して女の子がどうリアクションするのか?というのも楽しみの一つでしたね。豊崎愛生なんて、これからアイドル売りしてかなきゃいけない大事な体なのに、「カケルちゃんはいつもビンビン」なんて言ってて大丈夫なのか・・・?

変態的なギャグシーンだけでなく、アキカンとオーナーの絆を柱としたメインストーリーもよかった。カケルはあんな変態だけど、ちゃんとメロンのことを考えて行動できるいい男だったよ。孤独だったアキカンが愛されることを知った6話、お互いを思うがゆえに生じるすれ違いを描いた9話、そしてアキカンとオーナーの確固たる絆を見せてくれた12話。絆の深まりに応じて、ちゃんとエピソードが用意されている丁寧な構成。それそれが最終回といってもふさわしいほどの盛り上がりでした。

あとは、OPとEDの作りこみもすごかったなあ。普通1クールでOP変えないでしょ!特に新OPの"Juicy Extacy"はメチャメチャ好き。

Juicy Extacy TVアニメ『アキカン』オープニング主題歌

Juicy Extacy TVアニメ『アキカン』オープニング主題歌

EDも毎回アレンジされてて全く違う曲みたいになってた。最終回は、ミックスジュースのミクにちなんで初音ミクとのコラボがあったり、そういう遊び心も楽しかったです。

AACなる実写パートも珍しいですよね。アレは何の意味があったのか結局分からないのですが(笑)、なんというか、スタッフやキャストにとても愛された作品なんだというのは伝わってきます。

限られたリソースと時間で面白い作品を作るのは難しい。素人目にも、時間と金が足りなかっただろうことは容易に想像できます。そんな厳しい状況の中で、見せたいものだけに的を絞ってしっかり見せてくれる。作画は毎回ハラハラさせられたし、アキカン・エレクトなどの肝心な設定は最後まで分からなかったけど、アキカンとオーナーの絆を描き出すという軸はぶれなかった。だからこそ、重ねたエピソードの分だけ感動がある。

決して万人に受ける作品ではなかったかもしれないけど、自分にとっては心に残る名作でした。