Angel Beats! 総感

麻枝准脚本、P.A. Works制作等々、ものすごい鳴り物入りで始まって、放映時も色々と言われていた本作品。作品単体で語るならともかく、これまでの経歴から言えば異端中の異端である本作品をもってkey作品を語るとかフェアじゃないよなーとか思うし、見るたびに不快になるし、突っ込むのも面倒なのであまり見ないようにしてました。麻枝准憎しで叩いてる文章とかに至ってはもうアクロバティックすぎてついていけないですわ。まあやりたい人は好きにやれば、としか。

Keyらしいとか麻枝准らしいか、そういう部分はあまり重要じゃないし、アニメとエロゲーを同じ土俵で比較するのもナンセンスだと思ってる。敢えて言うならば、本作品はそういうエッセンスのみを取り出した別モノだと思っています。あの京アニが原作に忠実に作ったCLANNADすら別モノなのに、共通点のほとんどないアニメオリジナルの作品をどうして同じ土俵で語れると思っちゃうのかな・・・。

っと、放映中はできるだけノーコメントを通していたので、この辺で少し触れておくことにしました。


閑話休題。本編の感想をひとことで言うなら、「天使ちゃんマジ天使」。かなり好きな作品でしたよ。もちろんシリーズ構成の拙さや無配慮さはあったにしろ、それを補って余りある魅力があったと思います。1クール作品においては、そういう魅力こそが大切だし、それを最大限楽しむことこそが醍醐味なのですよ。

本作を語る上でやはり外せないのは天使ちゃんこと立華かなでちゃんでしょう!2話目にして早くも天使ちゃんが気になりだし、5話のお当番回で完全にやられましたね・・・。まーぼーどーふ!ヒロインであったはずのゆりっぺを軽々と食ってしまう正ヒロインっぷりは凄まじかったな・・・!この作品をかなでと音無の物語としてみるならば、1クールアニメとしてはパーフェクトに近い構成という考え方もできるですよ!SSSに虐げられる(?)天使ちゃんに萌えつつ、段々と内面を掘り下げつつ、最後の最後で音無との運命を決定づける。壮大な宣伝や、SSS団、もしかしたら「死んだ世界」そのものもスケープゴートに過ぎなかったのかもしれません。

単体のエピソードとしてはギャグテイストも多くて、結構見やすい作品でもありました。個性的なSSSの面々が、学校に対してバカバカしい反抗を繰り広げたり、一度死んでるからって身体を張りすぎたダイナミックなネタを見せてきたりと、そういうシーンも好きでしたね。Key作品ファンとしては、ウンザリするほど冗長な日常を乗り越えて・・・というところでの本筋だと思ってるから、この作品のギャグシーンはむしろ食い足りないという感覚があるんだけど(笑)。その辺りは1クールアニメとしての尺の限界なのかな。

お話ばかり話題になって、作画的なところはイマイチ触れられていないような感じがするのですが、全体的に作画の質は高かったと思います。3DCGみたいな印象を受けたのは、そういう作風に変わったのか、それともネットゲーム的な世界観に合わせたのか。個人的には後者だと思っているのですが・・・。天使ちゃんのハンドソニックが「0」と「1」の数字に分解していくカットとか、ふるふる震える麻婆豆腐とか、作画で見せる演出が多かったのも好み。特に天使ちゃんは、台詞もリアクションも少ないから、細かい芝居をちゃんと作画レベルで描いてくれていたのは嬉しかったなー。

声的にはあまり特筆したいことはないかな・・・。櫻井浩美については元々門外漢だし、本作品に限って言えば、ファンの方には申し訳ないけどイマイチ好きな声ではないな・・・という感じ。声優さんの演技というよりも、脚本と作画で見せる作品という印象が強かったですね。そんな中で、天使ちゃんの花澤香菜は相当難しい芝居を強いられただろうな・・・と言うことも想像できてしまいます。天使ちゃんに限って言えば、脚本ではなく作画と演技で見せるキャラクターだったから。声の話とはちょっと外れるけど、岸誠二&飯田里樹らしい音響演出の遊びが見られたのも楽しかったですよ。

かなでと音無の物語を中心として、世界観も含めて他の部分をバッサリ切り捨てた構成は、1クールアニメとしてはよかったと思います。中途半端に全員の見せ場を作ろうとして失敗するよりずっといい。でも、この世界観とキャラクターだったら、2クール以上かけてじっくり付き合っていきたかったなあ・・・ということも考えてしまいます。その意味ではもったいない作品ではあったかな。