カナクのキセキ(ネタバレあり)
ラノベの感想は勝手が分からないので・・・とりあえずタイトルに「ネタバレ」って入れとけばいいかな?
- 作者: 上総 朋大,さらちよみ
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2011/01/20
- メディア: 文庫
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「わがままで暴力的でワケ分かんなくて」
「だけど大切な彼女と旅した日々は、切なかったけれど・・・楽しくて」
実はこの作品を知ったのが本多真梨子のCMで。いや、最初は新井里美かな?と思ったんだけど、調べてみたら本多真梨子だったらしいのです。
http://mblg.tv/mosamosa2/entry/465/
このCMの声がもうすごく好きで、作品自体にも興味が出てきて(乗せられてる)。ブログを見てたら本多さんもお勧めしてるし、じゃあ試しに読んでみるかなって感じで読んでみました。
あらすじとしては、主人公のカナクとヒロインのユーリエがマールの石碑を巡る旅に出てイチャイチャするという話。
世界観はよくあるハイファンタジーで、魔法体系そのものについては厳密じゃなくて割とざっくり決まってる感じ。最近読んだ作品*1では、魔法体系そのものが話のテーマだったりすることが多かったので、そこは意外といえば意外だったかな。作者の趣味を一番反映させやすいところでもあるし。
帯には「ヒロインのユーリエが可愛い」的な推薦文句が書いてあって、確かにユーリエは可愛い。破天荒なヒロインに振り回される主人公というのも安心して見られるフォーマットだし、初めからユーリエの好意が明確なのでニヤニヤして見てました。まあ個人的にはダークエルフのネウちゃんが一番好きなんだけどな!
さて。実は、途中までは結構退屈な作品だなーというのが正直な印象でした。確かにユーリエは可愛いけど、かわいいだけじゃ話を丸ごと引っ張るのはさすがに厳しい。「4つの石碑」という単位で話が構成されているのは読み易くはあったけど、同時にエピソードの淡白さも気になってて。ファンタジア大賞で金賞って言っても、まあそんなモノなのかな・・・なんてことさえ思っていたのですが。
4枚目の石碑を手に入れた後の展開のドライブ感が凄まじくて、一気に引きこまれました。「表」と「裏」で構成された2人の話、石碑に書かれたマールの思い出、そしてユーリエのカナクへの思い。今まで断片的に出てきたエピソードがひとつに繋がり、2つの世界がひとつの線で結ばれたとき、全てを理解した俺の感情の針がものすごい勢いで傾いたのでした。
いやいや、いくら俺だってそこまでアホじゃないよ?マールとユーリエに何か関係がある、くらいのことは分かってましたよ。カナクがネウちゃんを助けた時あたりからは確信に変わっていましたよ。でもさ、実際ユーリエがアルヴァダーグを唱えるシーンになったら、たったひとりでカナクとの楽しい記憶だけを思って死んでいったマールの思いがシンクロするわけですよ。カナクの命と引き換えに、記憶と髪の色、そしてカナク自身を失ったユーリエが、何を思って「マール」として生きてきたのか。そんな思いが一気に流れこんできて、そりゃもう感動するでしょ。
ユーリエはこの旅が無事に終わったら、望まない結婚を強いられて余生を過ごすことになる。そういう意味でも、この楽しい旅の記憶は、最初で最後の恋は、彼女が命をかけて守るべきものだったんだよ。そして、かつては魔女、現在は賢者として崇められているマールは、本当は普通の恋する乙女だった。石碑に込めた千年越しのラブレターというのも感動的だったなあ・・・。
考えてみれば、短い出会いが一生分の宝物になったり、千年越しの愛だったり、どれも定番のネタではあるのですが。しかし敢えて言いたい、定番のネタで感動して何が悪いと!欲を言えば、設定なりキャラクターなりに、本作品ならではの個性がもっと見えていれば、俺は確実に号泣してたと思います。