神曲奏界ポリフォニカ クリムゾンS 第06話「双魂:affettuoso」

幼い日の約束。それは二人にとって唯一の、そして最も大切な絆だった。

「ペルセルテ、プリネシカは体が弱い。しっかり支えてやるんだぞ」
「プリネシカ、ペルセルテはちょっとあわてんぼうだ。怪我をしないようにしっかりと見ていてやれよ」
「「えへへ・・・」」
「いつも、いっしょだよ」

ユギリ妹ことプリネシカ。故郷をテロリストに襲撃され、致命傷を追った際に父の力によって精霊ドーリスラエと同化したらしい。それからおそらく10年近く、ペルセルテの前では「プリネシカ」として振る舞っていた。しかし、ペルセを思う気持ちゆえに、ペルセを守ろうとして精霊の力を発揮してしまう・・・。

「ダンティストになれるのは、心のきれいな人だけ」
「ウソをついて人をだますような人は、絶対になれないんです」

潔癖なほどに嘘を忌み嫌うペルセにとって、最も身近な存在であるプリネが自分を騙していたという事実はどれほどショックだったか。そして、それはすなわち父親まで自分を騙していたということ。おまけにフォロンにも先日の事件の真相を隠されてるとくれば*1、信じている存在全てに裏切られたと思っても仕方がない。

そりゃあもちろん、ペルセだって分かってる。たとえ正体がウソだったとしても、今まで一緒に過ごした時間や絆も、ペルセに向けられた想いも、ウソじゃない本当の思いだってことは。でもなあ・・・そう簡単には割り切れないよ。「あ、そうですか」で今まで通りに過ごせるほど浅い絆じゃない。以前のプリネシカとは違う存在になったことは事実なのだから。

「嘘が、全部悪いって訳じゃないんだよ」
「嘘にはね、いい嘘と悪い嘘があるんだ」
「大事な人を傷つけたくないから、嘘をつく事もあるんだよ」

ペルセが欲しかったのはアドバイスでも肉欲でもなく、自分を無条件で許容してくれる父親のような存在。プリネに裏切られたと思ったペルセは、無意識のうちにもう1つの絆である「父親」を求めようとしたのでしょう。だから、ここでのフォロンの台詞自体に大した意味はない。ただ二人を認めてあげるだけでいい。

プリネがウソをつき続けてきたのは、ペルセを「傷つけたくないから」じゃない。ましてや「いい嘘」なんかでもありえない。「ドーリスラエ」としての自分を隠して、ペルセだけでなく自分自身にウソをついてまでも、守りたい大切なものがあったから。ペルセが「体の弱いプリネを支える」という幼い頃の約束を守り続けてきたように、プリネも「あわてんぼうのペルセが怪我をしないように見守る」という約束を守ろうとした。そして何より、二人は「いつもいっしょ」だった。

プリネが守ろうとしたのは幼い日の遠い約束。そしてそれは、大好きな父親と、大好きなペルセと交わした最後の絆。その思いにペルセがどこまで気づいたかは分かりませんが・・・。「ペルセが怪我をしないように」という約束を守ろうとして壊れてしまった絆が、「体の弱いプリネを支える」という約束によって再び結ばれる。それは、とても綺麗な物語でした。

追記、というかこの辺から感想

ここから感想なのか!

いや、今回は本当にすばらしかった。ペルセとプリネのお互いを思う気持ちを丁寧に追う構成がたまりません。感動のあまり、思わず長々と感想を書いてしまいました。

次の日の朝、アッサリ和解かと思いきやペルセが走り抜けてしまうシーンは「またミスリードか!」と驚かされましたね。ただミスリードさせたってだけじゃなく、そこで一回落とすことで物語が綺麗にまとまっていたのがよかったです。

「髪を下ろしてると違う子みたいですか?」
「どっちが・・・いいですか?」

この年代の女の子の持つ「少女」と「女性」の二つの表情。それはプリネの持つ「プリネシカ」「ドーリスラエ」という二つの人格のメタファーなのかもしれません。・・・と考えるのは穿ちすぎでしょうか?俺的にはどっちもイタダキマスでハッピーエンドですね!

  • それにしても、こんなときでも自己弁護に走るフォロンには虫唾が走るわ。自分がウソをついた後ろめたさを必死で隠すようにプリネを庇うフォロンは実に見苦しい。その辺の描き方はホント徹底してますね。
  • コーティ、また「なぁ〜にぃ〜」とか言ってる(笑)

*1:これはバレてないけど