伏 鉄砲娘の捕物帳

CMの寿美菜子がいい感じだったので、これは聞きにいきたいなーと思って行ってきました。

自分はいつも有給の時に映画を見ていたのですが、なかなか平日に休まなくなっていって映画も見ていない状態が続いてしまい。最近はアニメ映画が増えてきたこともあって、どうにか行けるリズムを作りたいと思っていたら、レイトショーというものがあるじゃないですか。10/20公開の映画で、一週間後の土曜なのに、席はガラガラ。日中がどのくらいの混雑なのかは知りませんが、元々平日に行くようにしてたのは混雑を避けるためでしかないので、こりゃーよい感じですよ。おまけに値段も安いしね。今後はレイトショーで映画を見る習慣を付けていきたい。しかしまあ、集客という点では心配にならないでもない・・・。よい映画なのでみんな見て欲しいですね。

お話的には公式サイトのストーリー紹介に書いてある通りで、決して難解な話というわけじゃない。ということで、思ったことをダラダラと書いていくよ。

やはり最初に触れておきたいのはヒロインの浜路ちゃんの寿美菜子でしょう。少年のように見えて、一人称が「俺」で、それでも年頃の女の子で・・・という微妙な境界線にいる浜路ちゃん。こういう役の寿美菜子は本当に素晴らしい。寿さんの少年役と言えば「オオカミさんと七人の仲間たち」の忠太郎くんが印象深いですが、それともちょっと違って、特に少年っぽさを意識したような印象はなかったな。むしろ一貫して普通の幼い少女として演じてるようで、それでも中性的な魅力が出ているのは寿美菜子「らしさ」なのかなー。

「魔乳秘剣帖」の感想でも少し触れてますが、スフィアの4人の中でアニメに出初めたのが一番最後だったということもあって、ずっと注目してはいたのです。ここ1〜2年は加速度的に魅力を増してきていた寿美菜子という存在が、ここにきてついに一つの形となって顕現したような。これはもう、文句なしに寿美菜子の代表作と言ってよいのではないでしょうか。

後はアレですよね、宮本佳那子。正直エウレカAOに出てた時は特に何とも思ってなかったのですが、ドリランドのミコト姫さんが超かわいくて、なるほど、これか!と回路が開きかけたところでの本作品だったのは実にタイミングがよかった。世界観ガン無視な冥土ちゃんの存在と、(この文脈においてはよい意味で)素人っぽさの残る宮本佳那子の声がうまくマッチして良いアクセントになってた気がします。ともすれば暗くなりそうなテーマにおいて、冥土ちゃんの存在にはすいぶん助けられましたね。

まーそんなわけで、美菜子ちゃんを聞きに行って、美菜子ちゃんが素晴らしかったので本作品は全く素晴らしい映画だったということになるのですが、せっかくなのでお話についても触れておこうかな。

里見八犬伝」は高校の時に読んだ記憶があるんだけど、内容については全然覚えてないという体たらくですが、本作品においては特に原作の知識は無くてもよさそう。「伏」と呼ばれる犬と人間の合いの子がいて、どういう訳か人間の「生珠*1」を食べる習性があって、時の将軍・家定公に高額の報奨金を掛けた「伏狩り令」をやらを出されててて、浜路ちゃんと兄ちゃんは伏狩りをする、ってお話。よくある人間と魔物とのボーイミーツガール的なお話、と言ってしまえば身も蓋もない。

話の筋はともかく、色々な周辺事情がバッサリ切られて本筋だけを追った形のシナリオになってるので、登場人物の気持ちを類推するのがちょっと難しい。「え、その話どこで聞いたの?」みたいなことが多々あった気が。「視聴者が見た事実はキャラクター全員が(いつの間にか)共有している」という前提があると考えたほうが良さそう。例えば信乃と凍鶴、親兵衛の関係性を浜路はいつから知ってて、どこまで知ってたのか?とか。凍鶴を殺した時は知ってたのか?知らなかったのなら、どこで知ったのか?とか。これはもう少し丁寧に話を追ってかないと分からないかもなー。初見じゃ話を理解するので精一杯だったもので。

話の筋といえば、序盤に晒し首にされていた子供の伏が凍鶴の子・親兵衛で、信乃が凍鶴に会えなかったのは親兵衛が殺されたことを伝えるのが辛かった・・・ということなんだよね。それが分かった時が一番ゾッとしたなあ。

それはそうと。ボーイミーツガール物としては決して悪くないんだけど、「猟師と獲物の間の『繋がり』」を描くのか、「人間と異形の者との共存」を描くのかが今ひとつ不明瞭だったかなあ。「猟師と獲物」に徹するのなら浜路は信乃を撃つことで「繋がる」ことになるんだろうし、異形の存在との共存的な話だとすれば、生珠に対する衝動と戦う信乃と浜路との関係性を描いて欲しかった。「信乃が生珠を食べるのを我慢する代わりに、浜路が信乃を狩るのを我慢する。これであいこだ!」って、非対称すぎんだろ・・・。だいたい、金のために凍鶴を殺した*2浜路を、信乃が何のペナルティも課さずに許せるもんかね!?

んー、まあ、話がかなり分断されてるので、俺の知らないところでちゃんと繋がってるのかもしれませんが。こればかりは原作を読まねば分からんかな。

あ、あと、okamaさんがビジュアルイメージ担当ということでしたが、さすが世界観の作り込みは素晴らしかった。浜路ちゃんが江戸の町を走り回るだけでたのしい。「かみちゅ」も好きだったなー。

色々書きましたが、分かりやすい話と世界観の楽しさ、アクションも多めで2時間飽きずに見られるよい作品でした。CMにちょっとでも惹かれた向きには満足できるモノになってるんじゃないかな。

*1:心臓のことかね?

*2:厳密には殺したのは兄だけど