宙のまにまに 総感

番組チェックで初めて公式サイトを見たときは、「なんだこの90年代にタイムスリップしたようなアニメは」と思ったっけ。実際、その印象は最終回を見終えた今でも大きく変わることはないんだけど・・・。

絵柄は現代風にリファインさせつつ、お話の芯にあるのは古きよき青春ドラマ。ただ、「古臭い=つまらない」ということではなく、こういうベーシックな学園モノで、手抜きをせずにエピソードの積み重ねでしっかりキャラクターを立てようとしていたのがすごくよかったです。いくら時代が変わっても、忘れちゃいけないことは確かにあって、それこそが変わらない魅力になってるんだと思う。

・・・うーん、ちょっと抽象的になったので具体的な話。本作品の中心になって話を作る、朔、美星、姫、文江の4人。設定的にはかなりテンプレートで、「お約束」を知っている人なら敢えて説明がなくてもお話を進めていけそうに思えます。1クールという短い期間であれば、なおさらお約束に頼ってもおかしくない。でも、そこで手を抜いてストーリーの消化に走っていたら、多分この作品は薄っぺらい単なる星解説アニメになっていたでしょう。

それがもっとも象徴的に出ていたのが、フーミンこと文江さんの一連のお話。普通なら「ツンデレ生徒会長」で終わってしまう文江に対して、美星の幼なじみという設定から、美星の理解者になりたいという思いを掘り下げていく3話5話は本当にすばらしかった。普通なら「星なんてくだらないわ!」ですむ話を、ここまで丁寧に描いてくれるとは・・・。

ヒロインの美星さん。俺はこの子が大好きで・・・。序盤の小動物チックなかわいさから、6話7話辺りの健気さまで、もうたまんないでしょ。星があれば父親と繋がっていられる・・・みたいなことを思っていたとしても、やっぱり悲しくないわけがない。そこに現れた朔というのは、美星にとってどういう風に映っていたのでしょうね。その辺は色々と考えたかったのだけど、俺は美星そのものよりも、むしろ「朔から見た美星」という視点で見ていたのかもなあ・・・。

キャラクターの話はこの辺にして。その他の話で言えば・・・毎回ラストは星で締めるというお約束が一貫してて面白かったですね。あんまり星に詳しくないから専門的なことはいえないけど、夜空の星のスケール感や、星を見るときのワクワク感、そういったものはしっかり伝わってきました。

それにしても、何でこんなアニメが深夜帯、しかも1クールなんだろう。夕方のゴールデンタイムに、2クール以上使ってじっくり見せるべき名作ですよ。