隠の王 第08話「伝わる心」

人の心が見えるがゆえに、その能力に疑いを持つことができない。人は、信頼するものにはこれ程無防備なのか・・・というのは、飯綱心眼という能力と同時に、加藤くんの存在にも言えることなんだよな。人の心が読めるから、入社して半年の加藤くんを無防備に側近に置いたりしてしまう。策士策に溺れる、か。

「これ以上心をもてあそぶな」
「心は人の命なんだ」
「一方的な支配で、心が全て手に入ると思うな」
「あなたの非情さは、人としてあまりに卑劣だ!」

雲平先生の言うことはもっともで、彼の立場としては当然言うべき台詞なんだけど・・・。壬晴や宵風の心に触れるたびに、八重さんもまた痛みを負っているようにも見えてしまいます。前回の八重さんの弱さを見てしまうと、自分の心に嘘をついて非情を装わなければならない彼女の辛さが少し痛い。人の心は見えるのに、自分の心は見えないというのは何とも皮肉な。
人の弱みにつけこんでいるようで、つけこまれているのは自分だった。八重さん切なすぎる・・・。それでも、彼女には帰る場所がある。人の心を読んでしまうことを知っていても、待っててくれる仲間がいる。それは唯一にして最大の救いですよね。本当は、隠の世とは関係なく静かに暮らしたいだけなんじゃないかな・・・。禁術書に執着がなかったのは、この件が終わったら足を洗うつもりだったのかも。

さて今回。萬天・灰狼衆・風魔・戸隠という組織間の争いに加えて、壬晴と宵風、雲平先生、虹一、そして八重さんとさまざまな個人の思いが錯綜していて何とも複雑なお話でした。それぞれの思惑が交差する複雑な構成なのに、驚くほどシンプルに見えるのはいいですね。