スイートプリキュア♪ 総感

顔を合わせればケンカばかりの響と奏。そんなふたりがプリキュアになって・・・という序盤の展開。久しぶりに「ふたり」になったプリキュアは先祖帰りしたような懐かしさがありました。

そこからマイナーランドに寝返ったセイレーンことエレンの話、メイジャーランドの姫・アコちゃんの話と移っていく視点。そして最後はメイジャーランド全体を巻き込んでの戦いに。守る対象が日常ではなく、いやもちろん加音町の平和を守ることも大切なのですが、メイジャーランドの方に重点をおいた話作りは面白かったです。

特筆すべきはノイズの存在。突然やってきたキモイ鳥・ピーちゃんは実はノイズだった!人々の悲しみから産まれた存在であるノイズ。綺麗なメロディーの影にノイズがあるように、幸せな心の影には悲しみがある。そんなノイズを倒すのではなく救うという展開は、古き良き勧善懲悪な展開ではない現代のプリキュアを象徴していました。

そんなノイズに関するターニングポイントとなる47話。せっかく面白い価値観を持ってきてるのに、悲しみを「乗り越える」という旧態依然としたマッチョ精神で押しちゃうのか、勿体ないなーと思っていたのですが。

最終回のピーちゃんを待つ話。倒しっぱなしじゃなくて、ちゃんと最後までフォローしてくれました。そして、口先だけ「救う」と言ってその実ただ倒してるだけじゃん、な今までのプリキュアではなく、ピーちゃんを飼う・・・悲しみを受け入れるという展開は素晴らしかった。

この手の悲しみから産まれた存在的なモノに対する自分の解釈は、「うみものがたり」が現時点での到達点として存在してて。人の悲しみから産まれたセドナは、自分自身と同じ。だから敵じゃないし、怖くない。悲しみから目を逸らさず心を開く。その思いは奄美の空と海に流され、再び人に帰っていくのだから。

で、ノイズですよ。うみもの基準*1に照らし合わせてみると、せっかくノイズという存在の本質に迫りながら、悲しみを「乗り越える」なんて言って倒しちゃうのは残念すぎるのです。しかし最終回で、それはノイズ=悲しみを「受け入れる」ことだと分かった。決して綺麗に組み立てられた展開ではないけれど、かろうじて踏みとどまった感じ。

この展開を踏まえて考えてみると、実は敵キャラを全て救ってるんだよね、今期のプリキュアは。誰も殺さないというだけでなく、全ての敵を身内に取り込んでいる。メフィストやファルセット、セイレーン達は元々メイジャーランドの住人だからよいとして、最終ボスであるノイズをも取り込むことで物語は完成を迎える。この包容力。スイートプリキュアとは、音楽の力によって全てを受け入れる物語であったのです。人々の幸せ、喜び、そして悲しみ。その全ては音楽。

次シリーズは再び5人になるみたいですね。5人シリーズとしてはプリキュア5が始祖にして至高、新たなスタンダードとも言える存在になってしまっているので、なかなかハードルが高い感じではありますぞ・・・。

*1:何それ