君に届け 総感

爽子の物語としては初回で完結していたようなストーリーではありましたが、不気味な見た目でコミュニケーションを拒絶され続けてきた100%ピュア少女の爽子ちゃんが、100%イケメンの風早くんとの出会いによって少しずつ変わっていく・・・という、ある意味では究極のファンタジーだったかもしれません。

思い返してみれば、ネタ的には初回の出オチみたいな感じだったので、後は取り立ててどうと言うこともない普通の高校生活を描いてるだけだったり。ただ、それを毎回ポエミーでドラマチックに盛り上げてくれて、思わず画面に引き込まれることが多かったですね。

まともな監督作品が「全力ウサギ」しかない上に、こういう少女漫画のイメージが全くなかった鏑木ひろ監督、オサレなジャパニメーション(笑)のイメージが強かったProduction I.G制作で、繊細な少女漫画の世界が描けるものなんだろうか・・・と視聴前は心配していたのですが、予想以上にウェットな作りになってたのは意外だったなあ。オサレ感を少女漫画的な方向にしっかり向けていて、感情移入させてくれる演出になってました。

お話としては、やっぱり9話から15話の胡桃沢梅編が最高でした。あり余る才能と、たゆまぬ努力を持ってしても手に入れられないものがある・・・というくるみのエピソードはすごく心に響くものがありましたね。毎回思い入れまくった感想を書いてしまいましたが、特に11話14話は本当に素晴らしかった・・・。余談ですが、14話の感想は今年入ってから一番思い入れを込めた感想なんじゃないかな。それほどまでに心が震えたくるみ編でした。

性格が悪いと思われがちなくるみさんですが、くるみはただ必死だっただけだよ。結果的に爽子が傷つく形になってしまったけど、くるみは人を傷つけて平気でいられる子なんかじゃない。そして忘れてる人が多いかもしれないけど、ちゃんと告白したのはくるみだけ、ということも大事なポイントですよ。

くるみと言えば、やはり平野綾に触れずにはいられない。かわいこブリッコで、だけど実は黒い面も持っていて、でもやっぱり本質は恋する女の子で・・・というくるみさん。この「黒いけどピュア」という難しいニュアンスをこれほど出せるのは平野綾しかいないでしょう。役者としての平野綾に対して今まで一度も好意的な印象を持ったことはなかったのだけど、胡桃沢梅さんはメチャメチャはまってた。自分の中では大きなブレイクスルーだったなあ。

平野綾以外のキャスティングもよかったね。主人公の能登麻美子は、まさしく爽子やるならこの人しかいない!という期待通りのキャスティングだったし、親友役の沢城みゆき三瓶由布子もうまかったなー。

自分の中ではくるみ編で燃え尽きた感があったせいで、それ以降のお話はイマイチ乗れなかったのが残念ですが、全体的に見てもレベルの高い名作だったと思います。多分続編が作られるだろうけど・・・個人的にはこのくらいのボリューム感で十分だったかな。