東のエデン 総感

作品の感想を一言でいえば「消化不良」。

最低でも2クール、もしかしたら分割4クールもありえるかも・・・と思えるくらいの設定。それが、まさか11話で終わってしまうとは。セレソンは9人もいて、ヒロインと仲間たちもいて、それで11話って終わるわけないじゃん。

この物語のテーマとして「100億円で日本を変えろと言われたら何をするか?」と言うものがまずあると思う。そこから、「変える側」の荒唐無稽な変革のカタルシス、それぞれの抱える正義、「持てる者」としてのノブレス・オブリージュ、そしてMr.OUTSIDEやジュイスの謎に迫ることでお話を掘り下げていく。同時に「変えられる側」として、今の日本が抱える問題や、その象徴としての(?)ニート問題、個人レベルではどん詰まりな咲の閉塞感を掘り下げていく。

その両者が出会うことにより、化学変化というか、パラダイムシフトとしてのユートピアを見せてくれると思っていたのだけど。滝沢と咲のラブストーリー的な部分は、コミュニケーションの最も分かりやすい形として恋愛モノの形式を取っているだけで、本質的にはセレソン側と一般人側がひとつになることで未来を変えていく・・・というのが一番見せたいところのように思えたのです。

しかし、いかんせん時間が短すぎた。化学変化を起こす前に、材料を並べただけで時間切れになっちゃったからなあ・・・。せっかく板津や「東のエデン」と滝沢が手を組んだのに、何もしないまま終わってしまったし。最終回も、ニートを集めて何かする!というレベルに至らず単なる人海戦術だったし・・・。

と、愚痴ばかり言ってるけど、最初の頃は本当に面白かった。いきなり全裸で出てくる滝沢のインパクト、設定に突っ込む間もなく進んでいくお話のスピード感、そして忘れられないのが舞台装置のリアリティ。現実の東京と地続きになってる世界観でありながら、どこか幻想的で、別世界のようなファンタジーを感じさせてくれました。特にショッピングモールが家になってる設定は、ありふれた日常の風景が、少し視点を変えるだけで全く変わった様相を見せてくれてすごく印象的でしたね。

それだけになあ・・・特に後半に入ってからは、大切なことをみんな台詞で喋っちゃうようになっちゃって、みるみる失速していったのが非常に残念でした。劇場版もやるみたいだけど、あと2〜3時間増えたところで消化しきれる作品じゃないし。

スタッフにとっては思いいれの大きい作品だったのかもしれない。考えた設定は全部出したかったのかもしれない。でも、だったらなおさら1年くらい掛けてじっくり見せて欲しかったし、それが無理なら作品の中で一番面白いところにフォーカスして見せて欲しかったです。「で、これって何の話だっけ・・・。全裸?」で終わっちゃうには悲しすぎる作品だよ。