喰霊-零- 第10話「悲劇裏」

なるほど、ここから2話に繋がっていくのか。黄泉が神楽に対して憎しみを抱くようになる過程として、もう1話くらい挟んでくるかと思っていたけど・・・結構唐突だったんだな、あの話は。

物語全体を俯瞰する視点としての2話に対して、黄泉と神楽と紀之を中心に据えた今回。同じお話でも、視点の違いで印象は一変する。話の筋に人の思いを乗せることで、物語としての力が伝わってきますね。

「殺して」
「早く・・・」
「殺して!!」

黄泉は自分を殺して欲しがっていた。それはおそらく、悪霊となった動機と同じく彼女の絶望に起因するものなのでしょうが・・・。ただ、その絶望が、自ら命を絶つ方向に向かわないのは興味深い。

自殺という最も確実で簡単な方法を取らず、他人に決断を委ねようとする黄泉。それはつまり、まだこの世に未練があるということ。「自分を殺して欲しい」というのは「自分を助けて欲しい」と本質的に全く同じ意味を持つわけで。

一騎を殺そうとしていたのも、単に紀之との時間を取られた事への恨みだけじゃないと思うんだよね。黄泉にとって、一騎などどうでもいい。自分の命すらどうでもいい。どちらの結末にしても、ただ紀之に決断して欲しかった。自分のことを真剣に考えて、自分のために選択をして欲しかった。

黄泉の最後のSOSに対して、ノーアクションな紀之は「意気地なし」と言われても仕方ない。・・・が、あの状況で何が出来ると言われると、紀之を責める気にはなれないですね。