時載りリンネ! 1

時載りリンネ!〈1〉はじまりの本 (角川スニーカー文庫)

時載りリンネ!〈1〉はじまりの本 (角川スニーカー文庫)

読んでみました。せっかくなので感想でも書いてみようかと。ラノベの感想はアニメと勝手が違って不思議な感じ。

感想の前に・・・

アメリカ行きが決まったとき、思いついたことの一つが「ラノベを読もう」ということ。向こうの人は帰るの早いだろうから時間を持て余すだろうし、休みの日とかも暇になるだろうな・・・と思って、せっかくだからこの機会にラノベを読んでみようと思い立ったのでした。
ラノベ選別に当たって指針にしたのは

  1. 面白い(当たり前か)
  2. 初心者向けである
  3. アニメ化の話が出ていない

の3点。「ラノベ おすすめ」とかでぐぐってみたんだけど、人気のあるラノベはことごとくアニメ化されてるのね。ラノベなんて星の数ほどあるだろうって思ってたので、ちょっとビックリしたよ。
色々調べて結局決めたのが本作。「文学少女」シリーズも候補だったんだけど、元ネタの文学作品をほとんど読んだ事がない(!)という事と*1、イメージ的にコバルト文庫っぽいかなと思った事と*2、そもそも近所に1巻から売ってなかった事などがあって、結局やめることにしました。
「結構暇になるだろう」という思惑は驚くほど外れてしまって全然進まなかったのですが、レストランで食べ物が出てくるまでの間とかのちょっとした待ち時間にチョコチョコ読んでいたら1月くらいで読み終えることができました。移動手段が車なので「移動中に読む」という一番有効な時間つぶしができなかったのは残念・・・。車だと酒も飲めないしさー。(関係ない)

感想を一言で言えば「ラノベ初心者にはマジオススメ」

「わくわくする大冒険がしてみたいな。物語みたいな。悪党に狙われて困っている女の子を颯爽と救うような話が理想ね。日常の中のふとしたできごとから幕を開けて、次第に謎が膨らんでいく不思議な展開、中盤はミステリーあり、活劇あり、友情ありの総天然色の大冒険よ。お待ちかねのクライマックスには悪党をやっつけて、もちろん最後はきれいな大団円を迎えるの。全てが終わったあと、前よりも少しだけ世界が輝いて見えたら素敵よね!」

本作の主人公、箕作リンネ・メイエルホリドが冒頭に放つ台詞。涼宮ハルヒで言うところの「ただの人間には・・・」にあたる、全体の主題を決める一言。その言葉どおり、「時載り」という不思議な力を持った金髪の美少女と、普通の男の子の久高が冒険を求めて町内で色んな騒動を起こすお話。
幼なじみ、妹、年上のお姉さん、謎の美少女と、どこのエロゲーだよってくらいに出てくる美少女、テンポよく進むお話、所々に出てくるラノベっぽいファンタジー設定や衒学趣味。なんというか、俺のような「ラノベ初心者がイメージするラノベ」そのままの世界が広がっていたのがすごく楽しくて「そうそう、こういうのが読みたかった!」と思わず頷きながら読んでしまいました。
タイトルでもある「時載り」の設定も面白い。読書を栄養源とし、活字を200万字読むことで1秒だけ時を止められるリンネの「時載り」の力。あとがきに書いてあった「物を食むように」という言葉が印象的で、「自分にとってアニメがそうであるように、作者にとっては本を読むことが物を食べることと同じなんだな」と共感せずにはいられません。それを踏まえて本編を思い出してみると、単に変わった設定だと思ってた「時載り」の力が妙に親近感を感じさせてくれます。
リンネの持つ不思議な力をきっかけに、少しずつ力の謎や「時載り」の背景が明らかになっていくのは実にラノベ的で、背景が分かるにつれて「時」とは一体何だろうと哲学的な観念に思いが至るのもまたラノベ的なのかな。
ラノベ的といえば、ハイテンションな美少女と、一歩引いた感じの普通の男の子という図式は自分のイメージするラノベそのままで*3、全体的に明るく楽しく、戦闘シーンも面白い。どんどんインフレ化していく戦闘は微妙なところもあるんだけど、1冊で完結していると考えればむしろ心地よい。
所々に出てくる萌え要素も楽しかったです。リンネが無駄にコスプレをしてたり、「ブリッジ」という萌えパーツ(?)を提唱していたりと、小説の形態をとりながら映像でイメージさせる事を強く意識した表現が随所に見られて、こういうのも現代のラノベなのかなーとか思ったり。
「時載り」の設定以外は概ね類型的な作りで、キャラクターに関しても全員「かわいい」とは思えるんだけど、特に魅力的というところまでは行かなかったかな。全体的に優等生なんだけど、飛び出てる部分が見られなかったのは少し残念かも。特に主人公のリンネの言動に対する重みが少なくて、そのせいで結構ご都合主義的に話が進んでしまうように見えるのはもったいない。もう少しリンネの心情を深く掘り下げて、彼女の言動に意味を持たせると同時に、それに必要な日常の積み重ねをもう少し見せてくれたら、かわいい「設定の」キャラクターである以上に一人の人間としてのリンネの魅力が見られたかなと思います。
とはいえ、その薄さが読みやすさやテンポのよさに繋がってる部分もあるので、よくも悪くも・・・というところかな?キャラクター個人の魅力というより、全体的に漂う楽しさやポップさみたいな雰囲気が好きな作品でした。

んー

あえてネタバレしないように書いてみたんだけど・・・結構気を使うなあ。ネタバレしない感想は「レビュー」に近いのかもなあ。

*1:太宰くらいはあるけど・・・高校生のときだからなあ。記憶が全然ない

*2:もう少しファンタジー的な作品が読みたかった。灼眼のシャナみたいに痛ワード全開だとなおよい

*3:昔のファンタジー小説とギャルゲーが融合した形なんだと個人的には思ってるんだけど