ef - a tale of memories. 第10話「I'm here」

「捨てるのではありません」
「あなたが捨ててもらうんです」
「だから痛いのですよ」

人が無限の命を持てない以上、無限の絆を持つことはできない。他人の中から自分の存在を消してもらうということは、その人の中で自分が死ぬということ。それはとても痛くて、とても辛いことだけど、だからこそ結ばれた絆は美しい輝きを持っているのです。普段は千尋シナリオに偏って感情移入しまくってる自分ですが、痛みを恐れずに自分の気持ちを吐き出した景、みやこ、そして紘の姿には胸を打たれるものがありました。
誰だって今の関係が壊れてしまうのは怖い。他人に存在を消されるのは怖い。誰かを選ぶために誰かを傷つけるのは怖い。でも、そんな硬直状態は小さなきっかけで破綻してしまうことも分かってる。硬直状態が続けば続くほど、無理を続ければ続けるほど外部からの刺激で容易に崩れてしまう。
それほどに脆かった紘と景の関係にみやこが入り込むことで、期せずしてみやこもまた自分自身と真剣に向き合う機会が得られたのかもしれません。少しずつ減っていくテレホンカードの度数は、最後の会話のタイムリミットであると同時に、着信履歴に99件溜まったみやこの思いが解かれていく過程であったのでしょう。延々と自分の気持ちを吐露するだけの留守電と違って、電話の先には相手がいる。みやこのモノローグにも近い最後の言葉を聞きながら、「うるせえよ!」と全てをひっくり返してしまった紘はカッコよかったですよ。