ももへの手紙

本日は所用で有給を取ったのですが、朝になって「せっかくだから何か映画みるか」と思って突発的に見ることになりました。

2012年4月21日(土) 全国ロードショー 映画『ももへの手紙』公式サイト

おそらくCMで多くの人が「ジブリっぽい」と思ったでしょうが、まあ本編もそんな感じで。トトロと千尋シゴフミを足して3で割ったみたいな。

あらすじとしては、ヒロインのももちゃんが父親と喧嘩して「もう帰ってこなくていいよ」と言ったら本当に「帰らぬ人」になっちゃって、その後に父の部屋から「ももへ」とだけ書かれた手紙が見つかり・・・という。ここまで見た時点で大体の話は予想できますが、良くも悪くも期待を裏切らない感じ。

と言いますか、話の筋が凡庸であることそのものは大きな問題じゃないし、本作品の本質ではないのですよ。多くの人間の人生は凡庸なものです。では何が本作品を特別たらしめているかと言えば、もちろんヒロインのももちゃんの存在。

父親を亡くしたショック、自責の念、東京からド田舎の瀬戸内海の島に移り住む寂しさ。地元の子ともなかなか打ち解けることができないもも。それでいて母親にはワガママっぽいことを言ってみたり・・・という、「ちょっと内にこもりがちな11歳の女の子」の描き方が素晴らしい*1。いわゆる「萌え」の属性では全くないんだけど、そういう全然かわいくないところが逆に生々しさを感じるというか。

そこから妖怪3人組に会って少しずつ明るさや前向きさを取り戻していくのですが、少しずつ変わっていくももの内面を小さなエピソードの積み重ねで動かしていく構成もよかったなあ。冒頭で「ジブリっぽい」と言う話を少ししましたが、この緻密さはジブリと対極にあるものに思えるのです。ジブリアニメは大きな流れに登場人物が飲まれていくことで話を動かしてる印象があるので。

そして何と言っても作画の細かさ。冒頭のシーンから予感はしていたのですが、ももちゃんの11歳の肉体をこれでもかと舐め回すような*2フェティッシュさがすごい。ノースリーブの裾から覗く幼い肢体の美しさと背徳感。田舎町では普通に見られる水着で川に飛び込むシーンも、田舎者たちの中でももちゃんの白い肌が妙なエロティックさを醸し出しているというか・・・。この辺の感覚は「絶対少年」の田菜編に通じるものがあるような。

うーん、あんまり語るとちょっと変態チックではあるのですが、それでも本作品の一番の見所だと思ってることも確かなので、やはり触れないわけにはいかないでしょう。いやまあ、そういう目で見なければ、普通に「丁寧な作画ですね」という話なのでしょうが・・・。

話を戻して。作画も脚本も、とにかく緻密に丁寧にももちゃんを描き出していて感情移入するには十分すぎます。ももちゃんにしっかり感情移入さえできてしまえば、あとは王道な話に乗せてやるだけで感動するのですよ。むしろ、ここまで丁寧に積み上げたのなら凝った話はかえって繊細さを損なう恐れがあるし。

その意味では、イノシシに追いかけられたり嵐の中をバイクで疾走したりするアクションシーンは必ずしも必要じゃなかった気はします。全体的に淡々としているのでエンターテインメントとしての盛り上がりを考えれば必要なシーンだとは思うのですが、個人的な好みで言えばむしろ派手すぎる印象ではありました。ここまでキャラクターを描いているなら「蛍火の杜へ」くらいの淡々とした感じが好きなんですよね。もちろん、アクションシーンとしての面白さも十分あって、特に妖怪たちが大量に集まってトンネルになるクライマックスは作画も凄まじくて盛り上がりましたよ。

最後にラストシーン。全体的に綺麗に組み立てられた脚本だと思っていたので、もしかしたらももが川に飛び込むシーンでイワが背中を押したりするんじゃないか?と心配していたのですが、自分自身の意志で飛び込むことができてよかった。あの妖怪3人組は、ストーリー上は父親の代わりにももといく子を見守る役目でしかありませんが、ひとりぼっちのももが作った幻想という考え方もあると思うのです。もちろん海美ちゃんにも見えたりしてるので作品上は実在しているはずですが、あくまで捉え方として。

あの3人と過ごした時間は、父親の代わりにももたちを見守っている時間であると同時に、ももが父親の死に気持ちの区切りを付けて前に進むための時間でもあるわけで。だからこそ、ラストシーンは出てきちゃダメだと思うのです。ももは自分自身の意志と力によって前に進んで、そして新しい土地で新しい友達を見つけていくのです。

そんな感じでしょうか。全く期待してなかったのですが、よい作品でした。見てよかった。

*1:今日の5の2」の感想でも書きましたが、俺は「11歳の女の子」というモチーフが大好きです http://d.hatena.ne.jp/kkobayashi/20081230/p18

*2:マメさんなんか実際に舐めてますからね、あれはヤバイ