S・A〜スペシャル・エー〜 総感

今シーズンのアニメの中で、一番心を動かされた作品でした。
大金持ちの子女が通う学園に、一般庶民が一人だけ入って・・・という話であれば、シンデレラストーリーになるのが普通なのに。最後まで光の勢いで駆け抜けましたね。
なぜかプロレスとか出てきた初回から思っていたんだけど、ギャグとシリアスの配分が絶妙だったのが印象的。真面目な話かと思えばヘンなギャグが入ってきたり、ギャグ回と思えば驚くほどシリアスだったり。少女漫画特有の、女の子の感情を繊細に描きつつ、少女漫画とは思えない破壊力のギャグを飛ばしてくる。そんな物語構造や演出のギャップがまた、不思議な魅力を見せてくれました。
キャラクターで言えば、やっぱり光ですね。頑張る女の子は元々好きなんだけど、光の明るさや前向きさ、ひたむきさや強さ、時折見せる弱さや脆さ、そして恋する女の子の表情。光に対する思いは「萌え」や「かわいい」と言ったものではない。「母性」というのも正しくない。言葉にするのは難しいけれど、光を見ているときの幸せな気持ちは確かにそこにあった。この子に出会えた彗がどれほど幸福だったか、俺にはよく分かります。後藤邑子の声も、正直最初のうちはぎこちなかったし「安直だな」とすら思っていたのだけど、こうして最後を迎えた今となっては後藤邑子以外に考えられない。本人の性格に反して、こういう男気のある子は演じることが少なかったように思うのだけど、元気な光とゆるゆるな光のバランスが素晴らしかった。改めて惚れ直した。間違いなく、後藤邑子の代表作の一つになったと思います。
脇役は完全に空気化していたけど・・・八尋と芽の奇妙な共感を描いた19話は本作のベストエピソードと言ってもいいんじゃないかなあ。本当によかった。八尋はずっと敵としてそんな役回りを演じてもらっていただけに、こうして救われるのを見ていると感慨深いですね。